「BOOK」データベースより
世界的な手品師として暮らした後、三十代半ばになったエリックは憧れのパリに乗り込み、オペラ座の新築工事を任されることになった。
工事は十数年に及んだが、地上の生活に疲れた彼はオペラ座の地下深くに秘密のすみかを作り上げ、ようやく安住の地を得る。
五十歳を前に体力も衰えると、〈オペラ座の怪人〉になることを思いつき、科学知識を駆使したトリックで人々を震え上がらせた。
が、そんなエリックを、新人歌手クリスティーヌとの運命の出会いが待ち受けていた。
オペラの歌詞に託して壮大なスケールで語る愛の物語。
あぁ、とうとう読み終えてしまいました。
その世界に浸っていたくて、ゆっくりゆっくりページをめくっていったつもりだったのですが。
上巻でペルシャの皇帝シャーのお気に入りだったエリック。
けれどエリックの傍若無人振りにいつまでも我慢できるほど、シャーは大人ではありません。シャーが望む奇怪な城を完成させたエリックは、用無しとどころか生かしておくには危険だとみなされ、命を狙われることに。
そこを助けてくれたのが、警察長官のナーディル。
別れのとき、ナーディルはエリックに見えない枷を与えます。
決して意味の無い殺人はしないこと。
ペルシャを去ってから、この約束はずっとエリックの良心の監視役となりました。
フランスに戻ったエリックは、オペラ座の新築工事に携わります。
その途中で、絶対に陽の射さない地下の暗闇に魅せられたエリック。
心安らかに過ごせる安住の地を、オペラ座の地下に創り上げました。
外に出ることがおっくうになった彼は、自ら『オペラ座の怪人』となり、少々話題と刺激を提供することで、劇場から報酬を受けることを画策します。
下巻の後半はクリスティーヌとの恋です。
上巻であれほど自分の欲望を抑制し、強い精神力であらゆることに耐えてきたエリックでしたが、クリスティーヌに出逢った途端、全く別人のようになってしまいました。
どうしても押しとどめることができない欲望。
50歳にもなる男の、純粋で強烈な恋心に、胸が詰まります。
結末は原作とは違っているようです。
原作のファンだと、この結末が許せないと思われる方も多いようですね。
でも、少し大人びたクリスティーヌも、子供の頃に戻ったように甘えるエリックも、とてもいいと思うのです。
その恐ろしい容貌ゆえに生母からも触れてもらえず、普通の人間として扱われることのなかったエリックでしたが、最後の最後に少し人間らしい幸せを手にしたのかなと思える結末です。
エリックに魅せられて、物語の雰囲気に引き込まれて、何度も何度も読み返した物語。
ガストン・ルルーの「オペラ座の怪人」を読み切ると、また違う印象を持つのかな。
次はそれを楽しみにしたいと思います。
文庫版
購入日:1994年
再読日:2016.01.25
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