「BOOK」データベースより
高彬と煌姫を契らせるという陰謀が失敗に終わった守弥は、瑠璃姫が篭もる吉野に乗り込むが!?(『守弥のジャパネスク・ダンディ』)。
父母を亡くした小萩は、幼い姫の話し相手として貴族の邸に勤めることになる。それが瑠璃姫だった!(『小萩のジャパネスク日記』)。
いよいよ京に戻ることになった瑠璃姫。みんなに内緒でこっそり帰京するが、それを待っていたのは(『瑠璃姫にアンコール!』)。
前巻に続く中・短編集です。
守弥のジャパネスク・ダンディ
前巻で髙彬と煌姫とをくっつけて、瑠璃姫を排除しようとした守弥。
けれどその計画はことごとく裏目に出てしまいました。
守弥は新たな計画を練り、静養中の瑠璃姫に帰京を勧めるという名目で、吉野に乗り込みました。
けれど頭脳派であるけれど体力的なものはからっきしな守弥。
あろう事か吉野到着直後に崖から転がり落ち、記憶を失うという事態に陥ったのです。
守弥って冷静で賢いヤツなんだけれど、ここぞ!というところで必ず失敗するんですよねぇ。
その記憶を失った守弥を助けたのが、なんと瑠璃姫。
瑠璃姫の待ち人にほんの少し似ている守弥の出現に、瑠璃姫はなにやら感じ取ったようです。自分の名前も思い出せない守弥に『峯男』と名付け、記憶が戻るまで邸に置いてやることにしました。
髙彬至上主義の守弥は、その髙彬のためにならぬどころか障害にしかならない瑠璃姫を嫌っています。でも記憶を失っている峯男は、瑠璃に好意を持ってしまいました。
さてさて、これはこれは面白い展開になってまいりましたね。
このお話も大好きです。
守弥って根っから嫌なヤツってワケでは無くて、ホントは情が深いんですよね。自分が認めた人に対しては、ね。
峯男の登場で瑠璃の傷もようやく癒えて、これでまた元気な瑠璃姫が帰ってくることになりました。
小萩のジャパネスク日記
こちらは瑠璃姫の腹心の女房、小萩の一人語りです。
下級貴族の姫だった小萩ですが、12歳のときに流行り病で父母同時に亡くしてしまい、叔母のもとに身を寄せておりました。
父母を亡くした悲しみは深く、いつまでもいつまでもめそめそとしていたところに舞い込んだのが、瑠璃姫のもとに仕えるというお話。
聞けば瑠璃姫も母を亡くしたばかりだと言います。
自分より2つ年下の姫が母を亡くし、都にもなじめずにいる…と聞いて、小萩は「泣き暮らしているであろう小さな姫君をお慰めしたい」と心動かされ、仕えることを決めたのです。
が、しかし…。
小萩と瑠璃の出逢いのお話。
瑠璃は小さな時からやっぱり瑠璃でした。
最初っから小萩は瑠璃に振り回される運命にあるのですね。
それでも瑠璃の行動の根底には大きな優しさがあるので、憎めないのです。
だから小萩も瑠璃から離れられないのですよね。
瑠璃姫にアンコール!
峯男と出会って帰京の決心を固めた瑠璃姫。
元気になったらなったで居ても立ってもいられなくなるのがこの姫です。
京のみんなに黙って吉野を発ちました。
もうすぐ京に入るというところで、偶然髙彬と遭遇。
瑠璃の顔を見た髙彬は、なんといきなり瑠璃を平手打ち。
さて、何が起きたのでしょう…。
相変わらず内大臣家の姉弟に振り回される髙彬です。
コチラが片付けばアチラが騒ぎを起こす…というような具合で、内大臣と共に心休まる時がありません。
今回はなんと瑠璃の弟の融が行方不明になりました。
行方不明…というか、覚悟の家出のようですが。
このお話で登場するのは夏姫。融の乳母の娘です。
幼い頃は瑠璃みたいに跳ねっ返りのじゃじゃ馬だったのですが、徐々に思慮深い落ち着きのある娘になりました。
その彼女は、幼い頃に髙彬に片恋してて、その淡い恋心は成長しても完全に消えてはいなかったようです。
「表の瑠璃姫、裏の夏姫」と、その昔に並び称されていた二人。
大人らしく落ち着いて見える於夏(夏姫)も、その本質は瑠璃と同じです。
融の家出と夏姫。関係があるのかないのか…。
あとがきによると、このお話を執筆中に著者は恋愛をしていらしたそうな。
恋愛の価値観が大きく変わっていく渦中であったせいか、その反映があちこちにあって、希望の星が夏姫でした。
夏姫のように鮮やかに過去からも執着からもさよならしたい、鮮やかに別れを告げて去りたい。これは今も変わらぬ理想ではあるのです。
確かに夏姫は「鮮やか」でした。
この巻の最後の最後で、やっと瑠璃と髙彬は今まで以上に仲良しになりました。
三度目の正直…というところかな。
よかったねぇ、髙彬。
でも人妻になってもまだまだ落ち着いた姫にならないのが瑠璃。
髙彬は、これからもますます苦労しそうです。
Kindle版
購入日:2014.03.25
読了日:2016.03.06
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