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なれる!SE7 目からうろこの?客先常駐術/夏海 公司

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Amazon「内容紹介」より
毎度おなじみの社長の強権発動により取引先のオフィスに常駐勤務となった工兵と立華。
常駐先は国内最大手のIT企業で、なんと藤崎の古巣だという。
大企業なので、さぞかし豪華な業務環境に違いない……、と勇み立つ工兵だったが、待ち受けていたのはプロジェクトルームと呼ばれる、理不尽かつ不自由極まりない場所だった!
いつもと勝手が違う環境で工兵と立華は苦境に立たされるが、そこで工兵が見出した一手とは!?

闇。あまりに闇。
新卒でスルガシステムに入社して半年とちょっと。
いろんな修羅場を経験した工兵くんでも、太刀打ちできないほどの闇が広がる今作品。
たまりませんよ…。

いつもの通り社長の無茶振りで、大手企業の案件に絡んで客先常駐することになった桜坂工兵くんと室見立華ちゃん。
最初は戸惑ったものの、大企業で働けるわけですから、新人の工兵くんはなんだかちょっとウキウキ♪

「NBLっていえば就活生憧れのスーパー大企業ですよ? そこのオフィスで働けるとか一業界人として素直に楽しみじゃ無いですか。んふふ、一部上場企業のオフィス、んふふぅ」

が、しかし案内されたのは仮設のプロジェクトルーム。
私物は一切持ち込み禁止。携帯電話もだめ。外部との接触不可能。
部屋に足を踏み入れた工兵くんたちが目にしたのは、一つの机に人が二人ずつ座ってて、背中も肘も隣りの人にぶつけながら作業している風景。
経費削減のため、必要最小限どころか必要なスペースも確保できないこのプロジェクト。
「私たち、売られちゃったの…???」ってな環境に二人は放り込まれちゃったわけです。

工兵くんたちのリーダーとなるのが、NBLの大濠さん。
ちょっと軽いけど気さくないい人。初対面ではそんな印象。
だけどこれが、史上最悪のキャラクターに変貌していくのです。
前作の西新伊織ちゃんもシリーズ最強の悪キャラでしたが、この大濠さんもそれを上回るほどのキャラ。全てのエンジニアの敵です。
必要な資料も環境も提供しないけど、「なんでこんなこともできないの?なんで残業なの?そんな細かい資料どうでもよくない?ちゃちゃっとやってくれればいいんですよ。難しいこと言ってないですよ?」

そんなこんなで降り続ける無茶振りの雨嵐。
工兵くんをかばうために盾となっていた室見立華ちゃんは、とうとう常駐先で倒れてしまいました。
けど、そんな立華ちゃんに大濠が放った言葉は、
「ここでは勘弁してよ。すぐ代わりの人寄越して。じゃないと費用精算とか面倒だし。」

黒いです。重いです。鬱々です。
このシリーズ、これまでの工兵くんたちはプロジェクトの成功に向けて四苦八苦していました。どんなに辛い状況でも最後には達成感があったんですよ。
でもこのお話、プロジェクトから逃げることを目標にしています。
この劣悪な環境からいかにして抜け出すか。
それが最終目標です。
「SE残酷物語」のサブタイトルが一番似合うストーリーでした。

立華ちゃんが倒れたあと、工兵くんは梢ちゃんに相談するのですが、そのときの梢ちゃんのひと言が印象に残りました。

私達はプロです。プロとは能力・作業に対し正当な対価を要求するものです。費用対効果や人間性を無視された挙げ句、言われるがままに扱き使われるなんてまっぴらです。

最終的にはある程度スカッとする展開となりますが、エピローグでさらにこの顛末の裏話が。そこが一番深い闇だったかもしれません。

どんな環境におかれてもプロのエンジニアとして全うしようとする立華ちゃんの根性に改めて惚れ直しましたが、次巻ではまたも大事件の予感。
スルガシステムに春は来ない?!

Kindle版
購入日:2013.12.17
読了日:2016.02.13

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