「BOOK」データベースより
走行中の豪華列車“ブルー・トレイン”内で起きた陰惨な強盗殺人。
警察は被害者の別居中の夫を逮捕した。
必死に弁明する夫だが、妻の客室に入るところを目撃されているのだ。
だが、偶然同じ列車に乗り合わせたことから、事件の調査を依頼されたポアロが示した犯人は意外な人物だった!
新訳でおくる初期の意欲作。
アメリカの大富豪の娘、ルース・ケタリング。
娘を喜ばせるため、父がプレゼントしたのが《火の心臓》と呼ばれる大粒のルビーでした。
彼女がブルー・トレインの中で死体となって発見され、手元にあったはずの《火の心臓》は消えていた…。
離婚寸前・破産寸前だった夫のデリク・ケタリングにとっては、このタイミングでの妻の死は願ったり叶ったり。宝石目当てでルースに近づく男もいます。
たまたま同じ列車に乗っていたポワロは、生前のルースと個人的な会話をした女性、キャサリン・グレーを相棒として、事件解決に動きます。
果たして走行中の豪華列車で起きた殺人事件の真相は…?
1926年に母を亡くしたアガサ・クリスティ。
同年に謎の失踪事件を起こします。
その2年後、1928年に夫と離婚し、その夫は愛人と再婚。
クリスティにとっては、最悪の時期だったのでしょう。
その時期に刊行されたこの作品。
クリスティ本人が、「私がこれまでに書いた中で一番ひどい作品」と言っているようです。
(「アガサ・クリスティ大事典」より)
短編「プリマス行き急行列車(「教会で死んだ男」に収録)」を長編に焼き直したもので、書きたくて書いたものではなかったのかもしれませんね。
これまでに数回読み返しているのですが(旧訳版含めて)、私もあまり好みの作品ではないなと思っていました。
犯人に魅力を感じないというか、好きなタイプの人物ではなかったんですね。
でも、今回読み返してみて、意外と面白いんじゃないかと少し印象が変わりました。
ま、やっぱり犯人には魅力がないですし、真相を語るシーンもやけにあっさりしていて好きではないのですが、興味深い登場人物は多くいました。
ポワロの相棒を務めるキャサリン・グレー。
老婦人のコンパニオンをしていて、思わぬ遺産を相続した女性です。
それほど若くもなく分別もあって頭も良くて。
骨董商パポポラスの娘、ジアも似ている感じかも。
キャサリンのいとこの娘、レノックスもいいキャラクターです。
クリスティ作品には魅力的な女性が多く登場しますね。
男性は…となると、なかなか思い浮かばないのですが。
こういう女性たちとポワロの会話が、この作品の一番の魅力かなと思います。
あとは気になる人物が3人ほど。
骨董商パポポラスは、17年前にポワロに事件を解決してもらっているようです。けれどそのお話は作品にはなっていないようですね。昔、どの作品のお話だろうとワクワクしていたのですが…。
情報屋ゴビーも登場します。
いくつかの作品でポワロの貴重な情報源として登場するゴビー。本書ではアメリカの大富豪・ルーファス・ヴァン・オールディンに雇われて登場します。
それとピエール・ミッシェル。彼は列車の車掌ですが、「オリエント急行の殺人」でも本作でも、最初に死体を発見するのが彼です。
あ、もう一つ面白い情報がありました。
キャサリン・グレイが以前にすんでいた村。
セント・メアリ・ミード村なんですよね。
クリスティが生み出したもう一人の名探偵、ミス・マープルが住んでいる村です。
ミス・マープルの友だちとかが登場してくれると、もっと面白かったんですけどね。
さてさて、次は魅力的な女性と魅力的な犯人が登場するミステリに進みます。
刊行年:1928年
THE MYSTERY OF THE BLUE TRAIN
登場人物
エルキュール・ポアロ | … 私立探偵 |
ルーファス・ヴァン・オールディン | … アメリカの富豪 |
ルース・ケタリング | … ルーファスの娘 |
デリク・ケタリング | … ルースの夫 |
ナイトン少佐 | … ルーファスの秘書 |
アルマン・ド・ラ・ローシュ | … ルースの愛人 |
ミレーユ | … ダンサー。デリクの愛人 |
キャサリン・グレー | … 遺産相続人 |
レディ・タンプリン | … キャサリンのいとこ |
チャールズ・エヴァンズ | … レディ・タンプリンの夫 |
レノックス・タンプリン | … レディ・タンプリンの娘 |
エイダ・メイスン | … ルースのメイド |
ディミトリアス・パポポラス | … 骨董商 |
ジア | … パポポラスの娘 |
コウ | … 警視 |
カレージュ | … 判事 |
Kindle版
購入日:2016.04.27
読了日:2016.05.21
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