Amazon「内容紹介」より
記憶が毎朝消えてしまう……。
朝のラッシュアワー。階段から突き落とされた男。
血まみれのリビングから消えた妻。ノートにこめられた記憶の真実とは……。非日常的な日常をテンポ良く描くSFでありライト・ミステリーとも言える作品。
特殊状況、特殊能力の下の人間には普段の生活がどう見えてくるのかをテーマに書き続けている著者が繰り広げる、驚きの展開と結末。
仮フランス装のちょっと凝った装幀の一冊。
通勤途中、駅の階段から落下して脳に損傷を負った井上賢一。
彼が朝目覚めるところからこのミステリの幕が開きます。
目が覚めると食卓の上に見慣れぬ赤いノート。
表紙には「命のノート」と太字で大きく書かれています。
その下には「起きたらまずこれを読むように」と。
表紙をめくると…。
お前は8月7日に事故に遭い、脳の海馬に損傷を負った。
そのためにそれ以降は一日しか記憶がもたない。
今日は8月8日ではない。まず今日が何日かを確認しろ。
タイムマシンに乗ったと思え。
お前はもう会社に行く必要はない。今は休職中になっている。
障害者年金と保険金が下りるので生活の心配はするな。
今日は一日掃除洗濯をしてゆっくりして、好きなビデオでも見ていろ。
今日が火・金・土曜なら夕方に合気道の稽古に行け。
自分自身の字でそう書かれたノートを見て、意外にすんなりと賢一は状況を受け入れます。
その後、このノートを読まずに休職中の職場に出勤したりとか、怪しげな場所に出入りしてしまってぼったくられたりとか、いろんな事件が起きます。
その都度、「命のノート」にはいろんなことが書き加えられていくようです。
そんなとき、大事件が!
朝起きると、リビングに血の付いたバットが転がっていて、家具もめちゃくちゃに壊されていました。
加えて床は血まみれ。
賢一の両手も血まみれ。
でも犠牲者の姿は見えません。
果たしてコレは…?
とても面白い設定のミステリです。
一度ページをめくったら、次が気になって気になって、ついつい一気読みです。
読みやすい文体である、というのも一気読みの一因ですね。
サクサクっと読めてしまいます。
けれど。けれど、です。
あまりにサクっとしすぎているような気がしました。
もったいない!
毎朝、賢一は8月7日の翌日だという意識で目が覚めます。
そして「命のノート」を読んで自分の状況を知るわけです。
もうホントに気持ちのいいくらい素直に「そうなんだね」と自分の状況を受け入れてしまうんです。
いやいや、もうちょっと葛藤しようよ…と思ってしまうワケですよ。
結末は上手いなぁと思います。
でも拍子抜けした部分もちょっとあるかなぁ。
あぁ、ホントに面白い設定なのに~!と、思わずにいられないミステリでした。
著者のほかの作品も読んでみたくなりましたね。
興味津々です。
※本書は「本が好き!」様を通じていただきました。ありがとうございます。
単行本
受取日:2016.07.16
読了日:2016.07.23
ポチッとよろしく☆
にほんブログ村