本書「帯」より
落合美緒は、順風満帆な人生から一転、鬱々とした生活を送っていた。
ある日、パート先の同僚のイチハラが、大量殺人事件を起こしたと聞く。
彼女とコンビニで会った夜に事件を起こしたらしい。
イチハラが言っていた言葉「…成功したかったら、失敗するなってこと。…」を思いだし、かつてないほどの興奮を感じた美緒はあることを思いつき、昔の恋人で編集者である土谷謙也に連絡を取るが…。
失敗の種類が人それぞれ、結婚、家族、会社…。
様々な人間の失敗談から導き出される心理。
美緒は一体何を思いついたのか、そして事件の真相は?
なんだか不思議な物語でした。
著者である真梨幸子さん自身が登場したり、デビュー作である「孤虫症Image may be NSFW.
Clik here to view.」が人と人を結ぶ糸として登場したり。
なかなかに趣向を凝らした作品でした。
いろんな人の手ひどい失敗談を聞き出して、そこから成功へたどり着くためのルールを見つけようとする主人公たちですが、実際のところは
『人の不幸は蜜の味』
このひと言に尽きるのではないかと思います。
失敗か成功かなんて他人が判断できることではないので、自分自身がどう思うかということだと思うけれど、つい数ヶ月前まで高級住宅地に住んでいたのに、今はホームレス…なんてことになると、これはほとんどの人が『失敗だな』と感じてしまうでしょう。
ほかにも数ヶ月前まで普通の主婦だったのに死刑囚になってしまった女性とか、月収二千万円の売れっ子だったのに借金地獄の挙げ句に自己破産して行方不明の作家とか、いろんな人の失敗談が出てきます。
まるでジェットコースターのような人生ばかり。
それはそれは、めまぐるしい展開です。
キーワードは「ときめき」。
人生にときめきを求めて、ときめきを感じる方を選択していった結果、どんどん深みにはまっていく様が…。なんだかもう言葉がないほどの悲劇と言いますか、喜劇といいますか。
本書は「孤虫症」の世界とかなりの部分でリンクしているらしく、初めて真梨作品に触れる方、あるいは「孤虫症」未読の方が楽しめるかどうかというのは、非常に疑問です。
真梨さんのファンの方、特に「孤虫症」が好きな方には、すごくお薦めです。
数年前に読んだ「孤虫症」。
細かなところはちょっと忘れてしまっているので、コレを機に読み返してみようと思います。
また新たな発見と「ときめき」を得られるかもしれません。
単行本
購入日:2016.07.20
読了日:2016.07.29