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三幕の殺人/アガサ・クリスティ

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「BOOK」データベースより
引退した俳優が主催するパーティで、老牧師が不可解な死を遂げた。数カ月後、あるパーティの席上、俳優の友人の医師が同じ状況下で死亡した。
俳優、美貌の娘、演劇パトロンの男らが事件に挑み、名探偵ポアロが彼らを真相へと導く。
ポアロが心憎いまでの「助演ぶり」をみせる、三幕仕立ての推理劇場。新訳で登場。

「三幕の殺人」というタイトルどおり、三人の死者が出るミステリ。

引退した元俳優、チャールズ・カートライトが主催したパーティで、最初の死者が出ました。
パーティに到着したばかりの人の好い老牧師が、出されたカクテルを口にした途端、苦悶の表情を浮かべ倒れたのです。

二人目はチャールズの友人であるストレンジ医師。
彼も最初の死者が出たパーティに出席していました。
最初のパーティに出席した人たちの、ほぼ全員を自宅に招いてパーティを開いたストレンジ医師。そして彼もまた牧師と同じような状況で死を迎えたのです。

ストレンジ医師の死は明らかに毒殺でした。
そこで、最初の死も自然死ではないと判断され、ポワロたちの捜査が始まるのです。

そんななか、第三の死が…!

ミステリの前半では、ポワロはほとんど登場しません。
代わりに探偵役を務めるのは、元俳優のチャールズと、彼の心酔者である若い娘エッグ。
このヒーローとヒロインの活躍を脇から支えるのが、サタースウェイト。観察力に優れたサタースウェイトは、ハーリ・クィンシリーズにも登場します。

三人の素人探偵が動き回る前半は、正直なところ少しまどろっこしい印象です。謎が謎を呼んで、真相はどっちの方向にいるんだか、全くわからないままなので。
ポワロがこの輪の中に加わった途端、事件は解決に向けて動き出します。

このミステリのポイントは動機。
『ホワイダニット(Why done it?)』です。
一度読めば、犯人は忘れないでしょう。とても奇抜な動機です。
今回、その人物に注目しながら読み始めました。
いやはや、細かなところまで張られた伏線に、ため息が出るばかり!

動機と言えば、もう一つ面白いことが。
このミステリ、英版と米版があります。
このクリスティー文庫の「三幕の殺人」は、英版を訳したものです。
一方、創元推理文庫の「三幕の悲劇」は、米版を訳しています。
この二つ、犯人はもちろん同一ですが、殺人の動機が異なるんですね。
手元に「三幕の悲劇」もあるので、最後の謎解き部分だけチラッと見ましたが、全く異なっていました。
なぜ違う動機にしたんでしょうねぇ。

そして、これはポワロに最大の危機が訪れたミステリでもあります。 最後の最後にそれが何だったのか明らかになるのですが、ホントに…ぞっとしますよぉ…。

終わりにもう一つクリスティの仕掛けをご紹介。 本作は俳優や女優が登場することもあって、最初にスタッフ紹介のような部分があります。

《演   出》 チャールズ・カートライト
《演出助手》 サタースウェイト、ハーミオン・リットン・ゴア
《衣   装》 アンブロジン商会
《照   明》 エルキュール・ポアロ

最後の《照明》ですが、これって英語では『illumination』ですね。
この単語、『照明』という意味と『証明・解明』という意味があるんですって。
なかなかおしゃれな言葉遊びだと思いませんか?

あ、ポワロの名言も一つご紹介。

イギリス人はよくこういいます、
『尊大なやつは、あまりたいしたことがない』
これはイギリス的なものの見方です。
ちっとも真実ではありません。
そうやって、わたしは人々に油断をさせるのです。
いまではすっかり…
癖になってしまいましてね。

アレはわざとだったんですね。

さて次は、空の上で起きた殺人事件の話に進みます。

刊行年:1934年
THREE-ACT TRAGEDY
MURDER IN THREE ACTS

登場人物

チャールズ・カートライト  … 元俳優
サタースウェイト      … 美術・演劇のパトロン
バーソロミュー・ストレンジ … 医師
ミルレー          … チャールズの元秘書
アンジェラ・サトクリッフ  … 女優
フレディ・デイカズ     … 大尉
シンシア          … フレディの妻
メアリー・リットン・ゴア  … 未亡人
エッグ           … メアリーの娘
スティーヴン・バビントン  … 牧師
ウィルズ          … 劇作家
オリヴァー・マンダーズ   … エッグの友人
テンプル          … チャールズのメイド
エリス           … 執事
エルキュール・ポアロ    … 探偵

Kindle版
購入日:2016.07.20
読了日:2016.08.27
翻訳者:長野 きよみ

クリスティー文庫
購入日:2004.05.01
翻訳者:長野 きよみ

クリスティー文庫
購入日:2016.07.20
翻訳者:田村 隆一

創元推理文庫
購入日:2016.07.20
翻訳者:西脇 順三郎

新潮文庫
購入日:2016.07.23
翻訳者:中村 妙子

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